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概要

日赤看護大学案内2018

34 修士では働く女性、博士後期では更年期の女性について研究大学卒業後は産婦人科病棟で助産師として働きました。学生時代から「女性の生涯を通じた健康支援」へ関心が高く、ウィメンズ・ヘルスの研究を進めるため大学院に入学し、修士課程では「働く女性の健康」を研究しました。博士後期課程では更年期症状を抱えた女性のつらさの様相を明らかにする研究に取り組みました。更年期症状に対し、医学的なアドバイスが対象者にフィットしない状況に出会い、「なぜ個人の苦しみと、社会や医療の常識がずれているのか」その疑問が出発点でした。更年期症状体験者である4 名の女性にインタビューし、どんなつらさを感じているか、何がつらいかを質的に分析することで、つらさがさまざまな苦しみで構成されていることが明らかとなりました。周囲にわかってもらえないこと、今まで頑張れたのにそれができなくなること、自らの老いを認めること、あるいは身の周りの関係性のなかで起こる「つらさ」もあります。個人差ゆえに共有できないものもあります。これらを本人の立場に立ってどうケアに生かすかが今後の課題です。母校の大学教員として現在は母校である日本赤十字看護大学の教員となり、講義や論文指導を通して自らの臨床体験を学生に伝える立場になりました。「実習と講義をどう結びつけるか」など課題を感じつつ、「女性と児、その家族にとってよりよい看護」を学生とともに考え続ける毎日です。また国際保健助産学専攻の学生とともに、カンボジアで多角的なシステムの構築や産婦を中心とした助産ケアの導入などを学ぶ機会を得ました。カンボジアでの実習などを通して、国際的な視野をもち活躍できる助産師の育成を目指しています。今後の研究テーマとして、同じ病気でも男女によって症状が違う性差医療に関心を持っています。これからも女性に優しい医療を目指す研究に取り組んでいきたいと思っています。「死産に関わる助産師の思い」をテーマに卒業研究大学時代に「現場で働く助産師がどのような思いを抱いて死産を援助しているのか」をテーマに研究しました。きっかけは、身近な存在の死を体験し、産声をあげることなく産まれてきた子どもと家族をケアする「助産師の思い」に関心を抱いたことです。死産に関わった助産師のとまどいに焦点をあてたところが論文の特徴で、経験豊富でも「このケアで良かったのか」と、とまどいを抱き続ける姿がありました。語る場もなく心に蓋をしながら、その後の仕事に向き合っていたのです。助産師が抱えたとまどいは、ずっと消えない。導き出した結果をもとに、臨床心理士なども含めた職場全体のケアの必要性を論文にまとめました。課題を社会に発信する方法を大学院で習得大学院に進んで、個人が感じた社会的課題を自らの設定でプレゼンするなど、研究を通し社会に発信する方法を習得しました。さまざまなプロフェッショナルと協力して研究が進められるのも、大学院だからこそ。この先、大学教員、助産院・医療機関の管理者など、さまざまなキャリアステップを想定していますが、それができるのは大学院でしっかり研究ができたから、そう思っています。大学院では良い意味で教員と学生の距離が近い関係でした。先生方には「いつでも来ていいよ」という空気が漂っていて、遠慮なく「相談してもいいですか」と話しかけることができました。現在は、NICU(新生児特定集中治療室)で助産師として働いています。NICUは早産や低体重、蘇生が必要な赤ちゃんなど、新生児の専門治療を行う場です。大学院で質的研究や実験研究の方法を習得し、調査・データ・文献によって個人の気づきを論文として発信する経験を経たことが、自分の財産になっています。大学教員・研究者としてウィメンズ・ヘルスに取り組む大学院で学んだ知識・方法論を活かして多様な周産期医療を支える助産師に新田真弓さん日本赤十字看護大学 准教授(母性看護学)大学院看護学研究科博士後期課程2013年修了加藤小百合さん葛飾赤十字産院 助産師大学院看護学研究科修士課程国際保健助産学専攻2014年修了修了生のキャリアパス 成長するOG・OB